交流

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 夏のある日、バス停でバスを待っていた。田舎なのでなかなかバスが来ない。スマホを見るのも飽きたし、セミの声でもぼんやり聴いていようと思った。そこへ婆さんがやってきた。婆さんは俺の後ろに並んだ。婆さんは右手に裁ちばさみを、左手にビニール袋を持っていた。「暑いですねえ」婆さんは俺に話しかけてきた。「暑いですねえ」俺は答えた。婆さんが持っていたビニール袋に、人間の耳が透けていた。「耳ですか」俺は話しかけた。「ええ、耳です」婆さんは答えた。「これから都会へ狩りに行くの」「そうですか、暑いのでお気をつけて」「どうもありがとう」バスはまだ来ない。来る気配もない。「あなた、福耳ねえ」婆さんが話しかけてきた。
ホラー
公開:25/10/29 19:39

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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