生きた人間、お断り

午前０時。ハロウィンに備え、ウチの店では今仕入れの真っ最中だ。
大量のゾンビールを積み上げる。このビールを飲んだ死者が「生き返る～」とは中々粋な仕組みだ。
ゴクゴクと喉を鳴らすが一夜限りの生の始まりの合図。
死者の喜ぶ姿が目に浮かぶ。
「すみません…一杯だけでいいので飲ませて下さい…」
いい気分で準備をしていると水を差された。店先の看板”生きた人間、お断り”が見えなかったのか？ここは死者専門の飲み屋だ。
「一杯だけでいいので…」
死にそうな顔のサラリーマン。何だか哀れに思えてきて一杯だけなら…とゾンビールを出す。
「クソ！部長のバカが！無能どもが！」
ゴクゴクがたった一杯の酒でグチグチに早変わり。
「アンタはどう思う！」
ほら見ろ。ゾンビみたくこっちに噛みついてきた。これだから生きた人間相手は嫌なんだよ…
自分がどう思うかって？
とりあえず、今すぐアンタに帰ってほしいと思っているよ。