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出荷前のビール缶たちが、こっそり、でもワイワイと雑談している。
「グビグビ飲まれるのと、チビチビ飲まれるの、どっちがいい?」
「もちろんグビグビ!」
「や、チビチビだね。アテはスルメで」
「どっちでもいいよ。ただ、香りが引き立つ瞬間は味わってほしいな」
みんな理想を語り、笑いあう。
「とにかくおいしく飲んでほしいよね。気合、入れるぞー!」
「おー!」
盛り上がるなか、ある缶がぽつりと言った。
「味よりなにより、意外と、ーー誰と飲むかってのが、大事だったりするよね」
一同、少し静かになって。
「そればっかりは、仕方ないよ」
「うん。いいんだ。少しでも、ヒトの励みになれば」
缶たちは前向きなのだ。
出荷されれば散り散りになる。
けれど心はひとつ。
グビグビでもチビチビでも、ヒトの心を弾けさせられたら、それがいちばんうれしい。
グビッ、チビッ。
誰かの乾杯の瞬間を、今日も缶たちは夢見ている。
「グビグビ飲まれるのと、チビチビ飲まれるの、どっちがいい?」
「もちろんグビグビ!」
「や、チビチビだね。アテはスルメで」
「どっちでもいいよ。ただ、香りが引き立つ瞬間は味わってほしいな」
みんな理想を語り、笑いあう。
「とにかくおいしく飲んでほしいよね。気合、入れるぞー!」
「おー!」
盛り上がるなか、ある缶がぽつりと言った。
「味よりなにより、意外と、ーー誰と飲むかってのが、大事だったりするよね」
一同、少し静かになって。
「そればっかりは、仕方ないよ」
「うん。いいんだ。少しでも、ヒトの励みになれば」
缶たちは前向きなのだ。
出荷されれば散り散りになる。
けれど心はひとつ。
グビグビでもチビチビでも、ヒトの心を弾けさせられたら、それがいちばんうれしい。
グビッ、チビッ。
誰かの乾杯の瞬間を、今日も缶たちは夢見ている。
ファンタジー
公開:25/10/29 00:10
ご覧くださってありがとうございます。
学生時代、文芸部に所属して短いお話を書いていました。あれからウン十年、仕事、家事育児に追われて自由な創作から離れていましたが、心のリハビリ(ストレッチ?)のために登録。
//日々の生活が追ってくるため、ログインが不定期になります。
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藍見サトナリ