おいしい話

「貴様、人食い鬼なのに人を食った事がないそうだな？」
『ああそうだ。俺はあんな見るからにマズそうなもの、食いたくもない。だが人間の作る食べ物は別だ。あいつら、料理という技で食材の美味しさを引き出せるんだ。感動したね。だから俺は人間を食わず、人間の料理をたらふく食べてきた。そしたら俺も作りたくなってきてな。料理を始めたんだ。奥が深くて面白い。俺の料理、食ってみるか？』
「そこまで言うならご相伴にあずかろう。…うむ。確かに美味いな。儂が今まで食ってきた人間なんぞ、比べ物にならん美味さだ」
『そうなのか？俺は人間を食った事がないから知らんが、人食いの化け物のお主が言うのならそうなのだろう』
「しかし貴様は凄いな。美味いものを食って、美味いものを作り出せるようになるとは…以前儂が食った美食家という人間は、美味いものを食っている筈なのにマズかった。美味いものを食べただけでは、美味くならんもんだな…」