恋心？

最恐心霊スポットと名高いこの場所に今日も誰かがやってきた。
若い男だ。怨霊の私はそいつの胸に手を伸ばすと、心臓を鷲掴みにする。
あとは軽く力を入れるだけで、男の心臓は簡単に潰れる。
…と、普通ならそれに慄くはずが、男はなぜか笑顔を浮かべる。
「貴方の手が、僕のハートに触れている…感激だぁ…」
…こいつ、やべぇ奴だ…
作戦変更。今すぐ心臓を潰すのではなく、憑りついてじわじわと衰弱死させてやろう。
「僕に憑りついてくれるんですか？ありがとうございます！」
つくづく気持ちの悪い奴だ…そう言っていられるのも今の内…でもなかった。
私の余裕は男の部屋を見て吹き飛んだ。
壁から天井まで私の写真で埋め尽くされた部屋。
「沢山の心霊動画から貴方の写真だけを切り抜きました。ついに本物を迎えられるなんて僕はなんて幸せ者なんだ…」
その異常さに私が慄く。
が、同時にこんなにも私を愛してくれる男に胸がときめいた。