ビール検査とお祭り

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中世ドイツでは、ビールの濃さの検査があった。
木の長椅子にできたてのビールを掛けて、その上に検査官が坐る。
ビールが乾いたら検査官が立ち上がり、椅子がお尻にはりついて持ちあがったら合格だ。

今年もビール検査の日がやってきた。村人は陽気に長椅子へビールを飲ませる。ビチャビチャ、シュワワと心地よい音が響く。それから検査員がドッシリと坐る。
待ち時間はもちろんビールだ。検査員をぐでんぐでんに酔わせる。村人たちは検査官を飽きさせないように、目の前で陽気に踊る。歌や劇も披露する。
ビール検査は、村にとってお祭りなのだ。
いよいよ本日のメインイベント。検査官が立ち上がるときがきた。
ビリベリ、ビビリ。検査官の尻から椅子がコロンと落ちた。息をのむ村人たち。できたてのビールをたらふく飲んだ検査官は、やけくそのように宣言する。
「ええい、合格だぁ」
村人の踊りと歌が、再び動き始める。祭りは、まだまだ続く。
その他
公開:25/10/30 21:22

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