この音、いくら？

「…２５００円ってとこだな」

聴音筒を置き、店主は渋い表情で耳朶を回しながら査定額を告げてきた。

「えぇっ！？【グビリングビリン】なんて珍しいじゃん！高値がつくと思ったのにぃ～」

先日、じいちゃん家の蔵掃除を手伝った。ビール好きなじいちゃんは飲むのは勿論、喉越しの音を集めるのも好きだった。しかし、そろそろ管理が大変になってきたからと自慢の喉越しコレクションの一部を擬音買取店へ売ってくるよう俺に頼んだのだ。

「【ゴクゴク】や【チビチビ】よりは少ないが…市場に出回っていないわけじゃない。保存状態もまずい。【リン】に傷がついてる」

…じいちゃん大雑把だからなぁ。
基本的に飲み終えた缶や瓶に入れて喉越しを保存していたが、【ガブガブ】なんて剥き出しのまま蔵の中で響いていた。

「ちなみに状態の良い【グビリンチュルグビリンチュル】なら２５万だったね」

【チュル】の有無でそんなに違うのかっ！