紙魚

放課後、図書室に行くと図書委員の生徒達が薄い紙のようなもので本を磨いていた。
「何をやっているの？」
「あっ、先生。これは紙魚を取っているんです」
「かみ…さかな？」
「先生。これ、”しみ”って読むんですよ」
くすりと笑う生徒達。恥ずかしくなった私は話を切り替える。
「手に持っているそれは？」
「これはしみとり紙です。これで本を磨くと、しみが落ちるんです」
へぇ…と感心する。こんな紙でしみを落とせるんだ…
「先生もやってみます？」
生徒からしみとり紙を受け取ると私はそれで自分の顔を拭く。
「これで私の顔のシミもなくなるかしら？」
それはちょっとした冗談のつもりだった。
あっ！と、生徒達が声を上げた時にはもう遅い。
しみとり紙が、私の両目をキャッチしていた。
あまりの出来事に私の二つ目はしみとり紙の上を魚のように泳ぐ。
認めたくなかった。見上げれば私の顔、こんなにシミ・皺だらけだったなんて…