ビールが咲いた日

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2135年。
「爺ちゃん、何植えてるんだ?」
「気持ちよくなるもんじゃ」
「まさか、大麻か?」
ゴツん!爺ちゃんのゲンコツが飛んだ。
「バカもん!ビールじゃ!ビールの種を蒔いたんじゃ」
「ビール!…爺ちゃん、病院行こう」
ゴツん!ゲンコツパート2。
季節は移ろい、秋から冬になり、その寒さに耐えた種が春に芽を出し、本当にビールが咲いた。しかも、缶ビールが。
そのビールを収穫し、冷蔵庫で冷やした。
どんな味がするんだろ?
その日の夕方。
縁側に座り、プシュっと収穫したビールのプルトップを開けた。
そのままゴクゴク。
うまい!
爺ちゃん…。
もっと早く咲いていれば、このビールが飲めたのに。
爺ちゃんは、2日前に空の上へ旅立った。
その時、スマホが鳴った。
画面には、『爺ちゃん』と表示された。
「おう、ビール咲いたか?」
「ああ、うまいよ。早く宇宙旅行から帰って来いよ!ゴクゴク」
「全部飲むな!」
SF
公開:25/10/26 19:32
更新:25/10/26 19:52

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