そのお方

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そのお方とは、アタクシが生まれて20年という人生の節目を迎える際に出会いました。
老成の人に好まれる苦み走った顔立ちをされたそのお方に、アタクシは喉をくすぐられるような痺れを覚え、たちまち魅了されてしまいました。
それからのこと、そのお方を仰ぎ見ます度に、苦く焦げた恋慕のような感情がアタクシを支配しているのでございます。
顔が真っ赤に染まり、現から浮かび上がる心地に、アタクシはどうしようもなくこの身を委ねてしまうのでございます。
本日もまた、そのお方にお会いします。そのお方はいつも冷たい硝子越しにアタクシを見つめるものですから、思わず喉を鳴らしてしまうのです。
そしてアタクシはそのお方の、まずは絹のような泡に口付けをします。
それからゴクリ、ゴクリ、ゴクリと……
あっという間に飲み干してしまうのです。
あら、うふふ。失礼。
そのお方、ビールというのですけれども、貴方も一緒にいかがかしら。
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公開:25/10/28 18:33
更新:25/11/04 10:23

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