台風の種

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台風の日は特別な気分になる。雨風が強いと危ないので家から出られないが、今日はもう温帯低気圧に変わってしまうから外に繰り出した。
湿っていて生ぬるい風に髪を掻き回されながら歩く。空を見上げるとちぎれ雲が漂い、地面では木の葉や小枝が寝転んでいる。
コツン
頭に何か当たった。振り返ると竹とんぼの様なものが落ちている。拾い上げよくよく見ると木の実の様にも見えた。風に乗って南の方から来たのだろうか。ふと懐かしくなり木の実の軸を両手で擦り合わせ空に放った。その時強いつむじ風が木の実を巻き込んだ。木の実は高速で回りだし、やがて弾けてしまった。それを眺めていた俺の頬をひんやりとした風が撫でる。上空では暗雲が渦を巻きはじめ水滴が頬で弾けた。急いで駆け出す。なんてことだ!あれは台風の種だったのだ。背後で大気が渦を巻いていくのを感じる。ふっと体が地面から離れ、体勢を崩し倒れ込む。振り返った先に台風の芽が見えた。
ファンタジー
公開:25/10/28 18:13

あいはみと

最近始めました。
まだ勝手がわからないので探り探り。
短い話の掛け合いで関わり合う物語が出来たら面白いかなと試行錯誤中。

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