ビール

彼のさらりとした茶髪が好きだ。少し長めの髪が顔にかかり、左手でひょいと耳にかける、その仕草も。
彼の二重瞼が好きだ。どんな話をするときも私の目を真っすぐに見つめながら、ぱちりとまばたきする、その瞳に吸い込まれそうになる。
彼の好きなところは、挙げたらきりがない。彼のわざとらしくない優しさも、人知れず努力家なところも、時に苦しくなるほどの真面目さも、全ては私を魅了する。
でも今日、彼の一番素敵なところに気づいてしまった。そのことを伝えたら、彼はどんな顔をするだろう。どんな言葉を発するだろう。私の思いを、ずっと友達として付き合ってきた彼に伝えたら、彼はどんな気持ちになるだろう。顔の大きさほどあるジョッキを片手に、ぐびぐびと冷たいビールを流し込む姿を見ながら思う。
リズムよく上下する喉仏を眺めながら、私は決意した。ジョッキをテーブルに戻した彼を見つめ、微笑んだ。
「ね、私たち、結婚しよっか」