呑み行為

呑み音代行サービス『ノムゾー』の派遣酒員に登録して３年になる。
「毎度お招きありがとうございます！今夜も呑むぞ～！」
酔っ払い調のハイテンションで登場し、挨拶代わりのジョッキを軽快にあける。鍛え上げた喉越しのグビ音と、極上の『クーッ、ぷっは～！』に小さな拍手が飛んだ。
飲みニケーションの形骸化が生んだスキマ産業。依頼者の代理で飲み会に出席、豪快な呑みっぷりで場を盛り上げる。タダ酒飲み放題の上に金までもらえるのだから、三度の飯よりビール好きな僕には天職と言っていい。
「一気行きます！乾杯！」
場の雰囲気を壊す呑み音は『音ハラ』と嫌われる時代だ。飲み会初心者の新人さん、往年の宴会部長、飲み会キャンセル界隈を中心に需要が伸びている。

「盛り上がっていきましょー。かんぱーい」
ニーズと肝機能数値の上昇で呑み手不足が深刻化、最近は代行の代行も増えた。
「今日は１２人分か。さすがに１人じゃきついな」