愛国心
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町の外れに、さびれたペットショップがある。店内は薄暗く、しんと静まり返っている。ある春の日の昼下がり、一人のおじさんがその店を訪れる。薄暗い店内に、ケージが置かれている。おじさんはその中の一つを覗き込む。一匹の子猫と目が合う。おじさんはその愛らしさに微笑む。おじさんは店員を呼ぶ。店員が現れる。「何でしょう」店員が尋ねる。「この子猫が気に入った」「はあ、そりゃどうも」「ところでこの子猫の愛国心はどのくらいかね」おじさんは尋ねる。店員は鼻で笑って答える。「お客さん、犬猫に愛国心なんざありゃしませんよ」おじさんは店員を呆然と見つめる。「この店ではそんなものを売っているのか」「どのペットショップでも一緒ですよ」おじさんは肩を落として店を出る。その日の夜、兵士の集団が現れて、町中のペットショップを焼き払う。
その他
公開:25/10/24 21:59
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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六井象