おいしい話

ヒマラヤ山脈に挑戦中の私達はベースキャンプで暫くの間、足止めを余儀なくされた。
山に問題があったわけではない。高山病に苦しめられていたわけでも、装備に問題があったわけでもない。
では何があったかと言うと…食事がおいしかった。
このベースキャンプ。世界各国から人が集まり、その国の料理をふるまってくれる。
朝は焼き立てのクロワッサン。夜は石焼ビビンバとついつい食べ過ぎてしまい、体重も増えた。
トゥクパとうどんを食べ比べたり、私達からはすき焼きをふるまったりもした。材料も意外と集まりやすく、とても楽しいひと時を過ごさせてもらう。
一つの料理を囲み、多数の言葉で各々が山に込めた思いを語る。スマホがあれば翻訳も楽ちんだ。
別れの際には、またどこかの山で会おうと約束を交わす。
別れのない出会いは無価値と誰かが言った。
なら、もしこの挑戦が失敗に終わっても、それは価値のあるものになっているに違いない。