最後の乾杯
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「かんぱーい」
「美味しい?」
「美味しいよ。僕の中ではゴクゴク音を鳴らして飲んでいたよ」
「見えないからわからないわ」
「たしかに」
「毎日つきあってくれて、ありがと」
「僕は暇だからね。知ってのとおり」
「毎日違うビールで不満じゃなかった?」
「いろいろな味が楽しめて待ち遠しかったよ」
「そう、よかった」
「今日で一年か」
「約束通り、今日で最後ね」
「最後の一本いただこうかな」
「今、持ってくる。待っててね」
「改めまして、かんぱーい」
「ゆっくり飲んでよ。まだ一緒にいたいから」
「楽しいと飲むペースが上がっちゃうよ。最後なのに楽しいって言うのも変だね」
「本当……」
「じゃあ、そろそろ行くよ」
「うん、行ってらっしゃい。またね」
「またね、はもう無いよ」
「そうだった、ごめんなさい」
「おやすみ、さようなら」
テーブルに置いた缶の音を残して夫は窓をすり抜けて夜空に消えていった。
「美味しい?」
「美味しいよ。僕の中ではゴクゴク音を鳴らして飲んでいたよ」
「見えないからわからないわ」
「たしかに」
「毎日つきあってくれて、ありがと」
「僕は暇だからね。知ってのとおり」
「毎日違うビールで不満じゃなかった?」
「いろいろな味が楽しめて待ち遠しかったよ」
「そう、よかった」
「今日で一年か」
「約束通り、今日で最後ね」
「最後の一本いただこうかな」
「今、持ってくる。待っててね」
「改めまして、かんぱーい」
「ゆっくり飲んでよ。まだ一緒にいたいから」
「楽しいと飲むペースが上がっちゃうよ。最後なのに楽しいって言うのも変だね」
「本当……」
「じゃあ、そろそろ行くよ」
「うん、行ってらっしゃい。またね」
「またね、はもう無いよ」
「そうだった、ごめんなさい」
「おやすみ、さようなら」
テーブルに置いた缶の音を残して夫は窓をすり抜けて夜空に消えていった。
ファンタジー
公開:25/10/18 21:54
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