看ビール

昨日買った缶ビールが、冷蔵庫の奥で風邪をひいていた。
冷却口の近くで一晩寝かせたせいで、寝冷えしたらしい。プルタブを起こすと『へぷしっ！』といささか気の抜けたくしゃみが漏れた。
季節の変わり目で急に寒くなり、昨夜は飲まずじまいだった。悪かったねと謝りながら缶の汗をタオルで拭う。ズビズビ泡水を垂らして震えているが、啜った中身は意外にぬるい。
これは思ったより重症だ。グラスに注ぐのをやめ、戸棚の薬箱を探る。熱っぽいビールなんて美味しくないし、飲んだら風邪がうつってしまう。

子供用の冷却シートを缶のおでこに貼り、タオルで保温してもう一晩。
翌朝には缶ビールの熱は下がり、震えも止まって飲み頃に回復していた。
それでは早速。とグラスに注いで口元へ運ぶ。

グラスの中でビールの泡が急に波立ち、『ゴボ、ゴボッ！』と咳き込み始めた。
飲まずに看病した一晩の間に、今度は缶からビールに風邪がうつったらしい。