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キンモクセイの香りが秋の訪れを告げるように、私の鼻先をくすぐる。中秋の名月。息子のハヤトと月見酒の約束は彼の仕事によって果たされなかった。十六夜はとっくに過ぎ、下弦の月が澄んだ空気に青い輪郭を映し出している。デッキチェアに疲れた体を預けながら、大きなため息をつく。ハヤトに私は冷えた缶ビールを差し出した。「お疲れさま。ほらキンキンに冷やしたビールよ」
ハヤトはスーツのジャケットを脱ぎながら、「ごめんね、母さん」と言った。
夜景がパノラマのように眼下に広がる中で、私たちはステイオンタブを開けた。プシュッと指先に冷たさが伝わる。「乾杯」の言葉の代わりに軽く微笑みを交わし、ハヤトはゴクゴクと豪快に喉を鳴らしながら一気に飲み干す。「久しぶりに思い出した。この場所で月と夜景。キンモクセイの匂い。」月明かりに浮かぶハヤトの顔は、もう頼もしい一人の男だ。でもふと見せる笑顔には幼い頃の面影が垣間見えた。
ハヤトはスーツのジャケットを脱ぎながら、「ごめんね、母さん」と言った。
夜景がパノラマのように眼下に広がる中で、私たちはステイオンタブを開けた。プシュッと指先に冷たさが伝わる。「乾杯」の言葉の代わりに軽く微笑みを交わし、ハヤトはゴクゴクと豪快に喉を鳴らしながら一気に飲み干す。「久しぶりに思い出した。この場所で月と夜景。キンモクセイの匂い。」月明かりに浮かぶハヤトの顔は、もう頼もしい一人の男だ。でもふと見せる笑顔には幼い頃の面影が垣間見えた。
その他
公開:25/10/22 00:00
#クラフトビールコンテスト
いぬやなぎもくれんと申します。
季節の匂いと記憶を紡ぐショートショートを書いています。
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