愛の爆弾

　爆弾を身につけて仕事先へと向かう。
　いつもの通り、仕事仲間と挨拶を交わし、トラックに乗り込んだ。男は引っ越し業者の作業員だ。
　事件の始まりの合図はごく小さな音だった。あるダンボール箱を持ち上げたとき、ズボンの尻部分が破けたのだ。
　万に一つ他の作業員らにあのパンツを目撃されたら？　爆弾と呼ぶべき妻から贈られたパンツを目撃されたら？　
　男は身につけているハート模様のパンツを思って汗ばむのを感じた。
　人生最大の危機にまごつきながらも、尻の穴を隠しつつ、男は客の家の外に出た。
　このまま帰ってしまおうか。
　と、仕事仲間が次々と出てくる。知らない顔も出てくる。不思議に思えるほどの人数が出てくる。そして皆が皆、手を取り合って男を囲んで輪を作っていく。その輪がだんだんとハート模様になるのがわかった。