吸血鬼の心臓

生まれつき心臓に病気を持っていた私は長生きできないと医者に言われた。
懐かしい…今から千年も前の話だ。
今も私が生きているのは、私に心臓を提供してくれた吸血鬼のおかげだ。彼は私に自身の心臓が適合すると聞くやその場で心臓を抉り出し、私にくれた。
「俺は吸血鬼だぞ。心臓を抜き取られたくらいでは死なん。だが、その心臓を失えば俺は死ぬ。だから人間。長生きしろよ」
私は彼の為にも、長生きすると決めました。
吸血鬼の心臓を持つ私ですが、吸血衝動に襲われる事も、日光を恐れる事もなく、それでも吸血鬼の生命力でただただ長生きな人間として健やかに暮らしています。
こんな私を魔女と忌避する人もいますが「俺なんて吸血鬼だから忌避されるのには慣れっこだ」と夫が何でもない風に言ってくれるものですから気にならなくなりました。
ええ、あの時の吸血鬼は今、私の夫です。
夫の胸にぽっかりと開いた穴に愛を注ぐのが私の日課です。