告白色の口紅

今日は幼馴染の彼の大切な試合。私はその試合後に彼に告白しようと決めていた。その決意表明に私は告白色の口紅を塗る。
鏡の前で何度もセリフの練習をする。唇はその形を覚え、滑らかかつ自然に「好き」と言えるようになった。
そこまでしたのに、私は逃げた。
試合会場。私以外にも彼に告白しようと告白色の口紅を塗った女子が集まっている。
皆、私よりずっと綺麗で可愛い。だから逃げ出した。
試合会場を出る。こうなったらもうヤケ食いだと屋台を回る。
「おっ！美味そうなもん食ってんな。一口くれよ」
ふいに現れた彼が、私の持つフランクフルトにパクッとかぶりついた。
間接キスとか恥ずかしがる間柄じゃないけど、そういうのやめてほしい。
頬を膨らませる私に、ごめんごめんと軽く謝る彼。
「好きな子にはつい、ちょっかいを出したくなるんだよ」と滑らかかつ自然に言われ驚く。
彼の唇の端、マスタードと私の告白色の口紅がついていた。