おいしい話

僕は昔、王子様のアルバイトをやっていた。
その見た目から役名はチャーミング王子。そう、シンデレラ、白雪姫、眠れる森の美女に出てきた王子様さ。
そんな僕だけど、正直この仕事が嫌でたまらなかった…
そりゃ、最初は美女とキスができる！なんて浮かれていたさ。でも、このバイトは多忙だった。休みなんてなかった。
その忙しさで白雪姫とオーロラ姫を間違える事も多かった…どちらも眠っているんだし、どっちでもいいだろうと言ったら大目玉を食らった。
しかも清廉潔白なイメージがあるから、ずっと品行方正でいなくちゃならない。
おいしい話と思っていたら、大間違いだったね。
だからバイトを辞めた時、やっと解放されたって思った。というか、ストレスで白髪も増え、今じゃ僕が灰かぶりと呼ばれている。
この見た目は、そんな苦労の証さ。
ただまあ、そんな昔取った杵柄と茶目っ気のあるおじ様キャラで、今はマナー講師として成功している。