この世で一番美味いビール

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この世で一番美味いビールを呑みたい。
それが俺のたったひとつの願いで、人生の目標だ。
ビールのために世界中を旅していたある日、ある少数民族の村長から話を聞けた。
「秘境の寺院に、世界一美味いビールがあるらしい」
聞くや否や、俺はその秘境の寺院へと向かう。
僧侶は俺の訪問に驚いていたが、すぐにビールを分けてくれた。

「これが、この世で一番美味いビールか!」
まるで黄金のような液体。
ねっとりとした泡は生クリームのようだ。
見ているだけでよだれが出てくる。
「ちょうだいします」

ゴク、ラク、ゴク、ラク

不思議なのど越しだが、天にも昇るような美味さだ!
今までの旅を思い出す。
苦労と努力が、より一層このビールを美味しくさせているのかもしれない。

ゴク、ラク、極、楽、極楽――

「……良かったんですか? この男を極楽浄土に連れて行って」
「ああ、旅をしながら世界中の人を助けていたからな」
ファンタジー
公開:25/10/18 13:38
更新:25/10/18 13:55
クラフトビールコンテスト③

蜂賀三月

児童文庫を書いています。著書に『鮫嶋くんの甘い水槽』『無人島からの裏切り脱出ゲーム』『絶対通報システム~いじめ復讐ゲームのはじまり~』など。
 

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