酔いの口

今日の飲み会、俺の驕りだと朝礼で言ってしまったものだから朝から皆、ビールの口になっている。
「ゴク！ろう様です！」とキレのいい挨拶が飛び交う。
いつもなら億劫な電話連絡もハンドサインさながらのシュワ！を多用し、相手に要件を一気飲みさせる。
その勢いたるや、きっと電話の向こうの相手は泡を食っているに違いない。
ビールがエールになっている。いつもこうならいいのにと思わず苦笑いした。

皆が居酒屋に集まると、今か今かと乾杯を待つ。
俺は乾杯の挨拶で自信満々にジョークを披露。大スベリした。
誰もプシュッとも笑わない…凍り付く空気。
「さすが部長！私達の熱くなっていたビールの口を一瞬にしてキンキンに冷やしてくれるとは！見事なカンパイです！」
部下のフォローのおかげで盛り上がりを取り戻せた。あのまま場が白けていたらと思うと気が気でない。
ほっと一安心して口にしたビール。気が抜けたせいか味気なかった。