泡ラッシュ

「プシュッ、ゴクン、シュワシュワ」
その音が空に響いた瞬間、泡のように高速道路が立ち上がった。「プシュッ」と弾けると、片側二車線の道が地面から浮かび、ゴクンと喉が鳴るたびに見たことのないジャンクションが芽吹いていく。
ドライバーは戸惑いながらも進んだ。標識もランプもない。けれども、擬音のリズムに身を委ねれば、なぜか迷わず進めるのだ。
「プシュッ」
別の高速道路が交わり、そこには見慣れぬゲートウェイが立っていた。
「ゴクン」
誰かが小さくつぶやくと、前方に新しい出口が滲むように現れる。
「シュワシュワ」
泡立つ音が空から降り注ぐ。その波に乗ると、道路たちは交わり、分かれ、まるで生き物のように形を変えていく。
「プシュッ、ゴクン、シュワシュワ」
音の連なりが街を織り、ビールの泡から生まれた都市は今もどこかで膨らみ続け、泡ラッシュに酔いしれている。バブルが静かに弾けようとしているとも知らずに。