無駄省

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私の腕時計は、政府機関「無駄省」のAIに繋がり、あらゆる行動の効率を監視する。

寄り道、雑談、空想。全ては「無駄」と見なされ、ポイントとして加算、翌月の税金に響くのだ。
だから私は、常に最短ルートを歩く完璧な市民だった。

あの日までは。

帰り道、路地裏で痩せた猫を見つけた。
腕時計の警告を無視し、その背を撫でた。
罪悪感にも似た感情から、僕はその猫を「保護動物」として無駄省のデータベースに正式に登録した。僕の管理下にある、と。

月末、僕宛の通知書に、もう一通、小さな封筒が同封されていた。宛名にはこうある。

『登録住所:鈴木一郎様方 同居動物様』

好奇心に負けて開くと、こうあった。
『拝啓 猫様。今月も対象からの高純度「無駄ポイント」の徴収、ご苦労様です。報酬は最高級キャットフードとします。無駄省・対人情緒誘導課』
SF
公開:25/10/13 20:34

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