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老舗の豆腐屋で油揚げを買った。これを炙るとビールのおつまみに絶品なのだ。
茜に染まった家路を急ぐなか、見慣れぬ赤提灯が飛び込む。吸い寄せられるように暖簾をくぐると、凛とした美人の女将が微笑む。早々に顔を赤らめながら席につくとビールを注文した。しめた、まだ他に客は居ない。女将自ら瓶ビールを注いでくれる。コンコンと小気味よい音が響いた。
カウンターには美味そうなお惣菜が並ぶ。どれもビールに合う。女将とも会話が弾み、何杯目のおかわりか分からなくなった頃、うっとりと見つめた女将の顔がまるでキ…
気がつくと空き地の真ん中に居た。酩酊してここで酔い潰れたかと混乱する中、慌てて胸元を確認する。財布はある。ほっとする中、目の前に石やら葉っぱが散乱している。徐々に記憶が蘇る。最後に見た女将の顔を思い出した時、夜空を見上げた。見てたよと月が笑う。
「ああ、つままれたのか。私が」
油揚げだけが無くなっていた。
茜に染まった家路を急ぐなか、見慣れぬ赤提灯が飛び込む。吸い寄せられるように暖簾をくぐると、凛とした美人の女将が微笑む。早々に顔を赤らめながら席につくとビールを注文した。しめた、まだ他に客は居ない。女将自ら瓶ビールを注いでくれる。コンコンと小気味よい音が響いた。
カウンターには美味そうなお惣菜が並ぶ。どれもビールに合う。女将とも会話が弾み、何杯目のおかわりか分からなくなった頃、うっとりと見つめた女将の顔がまるでキ…
気がつくと空き地の真ん中に居た。酩酊してここで酔い潰れたかと混乱する中、慌てて胸元を確認する。財布はある。ほっとする中、目の前に石やら葉っぱが散乱している。徐々に記憶が蘇る。最後に見た女将の顔を思い出した時、夜空を見上げた。見てたよと月が笑う。
「ああ、つままれたのか。私が」
油揚げだけが無くなっていた。
SF
公開:25/10/13 09:11
更新:25/10/30 10:35
更新:25/10/30 10:35
まずは自分が楽しむこと。
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吉田図工