ウォーミングアップ

ビールをグラスに注ぐ。
黄金の液体、きめ細やかな泡。
完璧な一杯だ。

「今夜は違うぞ」と俺は自分に言い聞かせた。
「獣のように喉に流し込むのはもう終わりだ。紳士として、この一杯と向き合うんだ」

まずは一口、「チビチビ」と。
舌の上で苦味と香りをじっくりと転がす。目を閉じ、麦の息吹を感じる。素晴らしい。これぞ大人の飲み方だ。

テレビを観ながら、30分かけてゆっくりと飲み干した。

グラスは空になったが、心は満たされている。
この達成感。
俺は変わったんだ。

俺はすっくと立ち上がり、空のグラスを片手に、確かな足取りで冷蔵庫へ向かった。

そして、誰に言うでもなく、はっきりと宣言した。

「よし、ウォーミングアップ完了」