おいしい話

この前、散歩中に「おいしい話があるのですが、聞いてもらえませんか？」と声をかけられた。
怪しさは…ない。普通のサラリーマンといった感じだ。名刺を見ても、ちゃんとした会社だったのでホッとした。
「お時間は取らせません」
その言葉通り、その人の説明は上手だった。その話がどうおいしいのか、分かりやすくかみ砕いて説明してくれた。
凄く分かりやすく、出された条件は飲み込めなくもない。
ただなぁ…人の口でかみ砕かれたものを飲み込めって言われても、それはちょっとできない。私は赤ちゃんじゃないんだから。
おいしい話をお断りする。するとその人、おいしい話を自分で飲み込むかと思いきや、捨ててしまった。
「こんなもの、ガムと同じですよ。味のある時はしっかり噛みますが、味がしなくなったらすぐにポイです」
吐き捨てられたそれを見る。
どうやらこの人、おいしいところだけ持って行くつもりだったようだ。