おいしい話

この前、ウチで買い物していった客だがどうやら狸か狐の類だったようだ。預かった金がどんぐりになっている。
これを見た時はさすがに怒りに震えたよ。
でもな、このドングリよく見てみると食べられるドングリだったんだ。
生で食べる事も出来たが、火を通すと甘みが増してさらに美味しくなった。
驚いたね。まだこんなにもおいしいドングリが残っていたなんて…
でも、それと同時に危機感も感じた。こんなに美味いドングリがあるのに、狸や狐は山を下りて買い物しに来ている。
それはつまり、山の開拓で住む場所や食べ物を失われているって事に他ならない。
だから急いで工事の中止を申し出た。かなり時間はかかったが、粘り強く交渉した甲斐あって、なんとか納得してくれた。
お礼のつもりなのか今でも時々、狸か狐かがウチにおいしいドングリを持ってくる。
このドングリで人間をここまで働かせるなんて、あの山には中々の女狐か古狸がいるようだ。