晴れの門出

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「今日でこの町ともお別れです」
「大丈夫。きっとハレのカドデだよ」
「店長、意味わかって言ってるんすか?」
ハレは何か特別な、門出は旅立ち。節目の日を祝福する言葉。
今の自分に相応しいとは思えなくて噛みついてしまう。
「勿論。このライブハウスで君をずっと見てたんだから」

ミュージシャンを目指して、叶わなかった。だから故郷へ逃げ帰る。手を伸ばした憧れを、狂しくしがみついた景色も、全部捨てて。カッコ悪すぎて笑える。

「向き合い方は1つじゃないし、必要になったら取り戻しにいけばいい」
半分優しく半分突き放した語り口。
自分みたいのは珍しくもないだろう。

夢も思い出も関わった人たちも、此処に置いていく。音楽と詩はそっとポケットに忍ばせよう。

「降ってきたね。傘持ってる?」
ガラスの出入り口の先はポツポツとザーザーの中間くらい。
「いえ。でも予報は晴れの日なんで!本当、お世話になりました!」
青春
公開:25/10/11 11:38

いぬさか( 関東 )

初心者ですがよろしくお願いします。
心に浮かんだシーンを気ままに描いていきたいです。
同名で NOVEL DAYS でも活動しています。

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