猫の目

0
1

ある一人の小説家がその仕事を始めたのは、一匹の猫がきっかけだった。野良猫の白いキジトラで、男の近所に住むジジババによくいじめられていた。そのためとても警戒心が強かったのであるが、ある時男の玄関前で、その猫がお腹を向けながら転がっていた。普段なら、人の姿を見ればすぐに逃げ出すのであるが、その日は動く気配すらない。じっと見つめ合う、一人と一匹。少し黄色がかった透明感溢れる瞳の中の、三日月のような黒目が、しだいに男の心を掴んでいった。すると、
 小説家になろう。そして犬でもインコでもなく、猫を飼おう。
と考えると同時に、男は玄関を開け放していた。
 こうして白いキジトラは、今では男の膝の上で、ゴロゴロと喉を鳴らしてくつろいでいるのであった。
公開:25/10/10 22:55
更新:25/10/10 23:07

よたろー

なまけ癖を克服するために、毎日物語を投稿しています。読んでいただけたら幸いです。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容