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キノコ採りに山に入った若い夫婦は道に迷ってしまった。
「何やってるの!」
夫が沼の水を飲んでいるのを見た妻が叫んだ。夫は嬉しそうに言った。「これ、ビールだよ」
沼からはボコッボコッと音がして琥珀色の液体が湧いている。木漏れ日を浴び、その琥珀色はキラキラ輝いていた。沼の水を飲むなんて不衛生だと妻は思ったが、夫は満面の笑みで
「プハーッ、きみも飲みなよ」
と言う。妻は沼の水を手ですくい、舐めてみた。
「あ、本当だ」
妻もグビグビ飲み始めた。
やがて夜の帳が降りても二人は沼のビールを飲んでは笑い合い、家へ帰ることなどすっかり忘れ、沼のビールをたらふく飲み、寝入った。朝日で目覚めると、二人は濡れ落ち葉に横たわっていた。自分たちがどこにいるかも分からず、どこから来たのかも思い出せなかった。
その後、沼の付近では、琥珀色の、人間によく似た動物二頭がプシュップシューと鳴きながら駆けまわる姿が目撃された。
その他
公開:25/10/10 08:26
更新:25/11/07 11:35

ジャスミンティー

2023年10月から参加しています。作品を読んでいただき、ありがとうございます。

noteへの投稿も始めました。よろしかったら、そちらもご覧ください。エッセイ、短歌なども載せています。https://note.com/real_condor254 
 

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