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ホームに立つと、遠くでプシュッと栓を抜く音がした。見回すと、金色の泡を巻き上げながら、ビール列車が宙を滑るように走っていた。ビール列車は泡を撒き散らし、泡の中から笑う乗客が顔を出す。駆け寄ると泡は手にまとわりつき、ジョッキの声でカラン、カランと乾杯の音を響かせる。
乗り込むと車内の空気は麦とホップの香りで満ち、シュワッと泡が天井から降る。窓の外の景色は宙に浮かぶ街や川、雲までが泡立つ幻想世界。小さな星々が瞬き、流れ星の尾が列車の軌跡に絡みつく。駅ごとに音が違い、ポンッ、ガタン、ゴクゴクとリズムを奏で、宙に溶けるように揺れる。
座席に腰を下ろすと、泡の乗客がにっこり微笑み、僕も思わずジョッキを掲げる。気づくと、泡の中に小さな魚や光が躍る。
やがて目的地に着き、ビール列車が星屑のように溶けると、ホームには僕だけ。手元のジョッキがシュワッと笑い、遠くでまだビール列車の音が泡の中でこだましていた。
乗り込むと車内の空気は麦とホップの香りで満ち、シュワッと泡が天井から降る。窓の外の景色は宙に浮かぶ街や川、雲までが泡立つ幻想世界。小さな星々が瞬き、流れ星の尾が列車の軌跡に絡みつく。駅ごとに音が違い、ポンッ、ガタン、ゴクゴクとリズムを奏で、宙に溶けるように揺れる。
座席に腰を下ろすと、泡の乗客がにっこり微笑み、僕も思わずジョッキを掲げる。気づくと、泡の中に小さな魚や光が躍る。
やがて目的地に着き、ビール列車が星屑のように溶けると、ホームには僕だけ。手元のジョッキがシュワッと笑い、遠くでまだビール列車の音が泡の中でこだましていた。
ファンタジー
公開:25/10/09 19:23
更新:25/10/09 19:47
更新:25/10/09 19:47
1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。
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