五千円のラブストーリー

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彼女にフラれた記憶は、まるで呪いのように僕にまとわりついていた。食事をしても、音楽を聴いても、不意に涙がこぼれる。そんな僕を見かねた友人が、ある店のことを教えてくれた。「記憶買取センター」。そこでは、不要な記憶を買い取ってくれるという。
僕はすぐさま店へ向かい、ヘッドギアを装着された。いくつかの質問の後、あっけなく記憶の売却は完了。彼女との思い出は綺麗さっぱり消え、心は驚くほど軽くなった。買取価格は、五千円だった。
数ヶ月後、記録的な大ヒットとなった恋愛映画を観た。切ないラブストーリーに、なぜか僕の涙は止まらなかった。クライマックス、ヒロインが放った別れのセリフは、僕がかつて誰かから言われたような気がした。
エンドロールに流れた文字を見て、全てを悟った。
『原作:匿名希望』
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公開:25/10/13 01:15

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