ドタキャン

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 待ち合わせ時間より少し早く駅に着いて、プロフ通りの長身男を見つけた。
 切れ長の瞳、スッと通った鼻筋、サラサラした髪。碧人によく似ている。
(高校のとき、好きな子と一緒のクライミング部に途中から入ったって、それってもしかして……)
 そう思うや否や、スマホに親指を走らせた。
<ごめんなさい。急用ができてしまって……>
 ぺこり謝る猫のスタンプを押すなり、男がかぶりを振って歩き出す。あわてて追いかけて、努めて明るく呼びかけた。
「あれ、久しぶりっ。碧人、だよね?」
「ミ、ミナ?」
「うん、大学の帰り。碧人は?」
「実は今、ドタキャンされたとこ」
「って、彼女に?」
「いや違うよ。なあ、軽く一杯どう?」
 碧人と並んで繁華街を通って、小洒落た居酒屋に入った。
(マッチングアプリは、ひとまず休止。叶わなかった恋の続きを楽しめたらいいな)
 冷えたビールをコクコク飲む。喉が潤って心地よい。
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公開:25/10/12 14:30
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