流れ星

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 夏の民宿バイト最終日。私は紗季と競うように坂を下って、コンビニで缶ビールを買った。
「おつかれ、乾杯っ」
 軽くちろっと舐めて、夜空を仰ぐ。
「あっ、流れ星……」
 私の視線を追って、紗季もうっとり眺める。
「空気がきれいなこの場所で、もう少し働くつもり。ママと再婚相手が暮らすアパートに戻っても、どうせ居場所ないし」
「私も息苦しい家から逃げてきたの。過干渉すぎる親から一旦離れて、稼いだバイト代で海外旅行したいな」
 胸の奥で燻っていた本音が、はらりと漏れる。一気にご当地ビールをグイグイ煽った。
 ほろ苦くて、ほろうまい。
「今より明るい未来に乾杯っ」
「乾杯っ」
 もう一度、紗季と空き缶を合わせて、澄み切った夜空に掲げた。流星が太い尾を引いて、まっすぐ駆け抜けていく。
青春
公開:25/10/12 12:58
クラフトビールコンテスト③

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