樽メシアン

学校からの帰り道、樽メシアンを拾った。
「ぷしゅ～」と気の抜けた鳴き声。何故か放っておけなかった。
「その樽メシアン、ビールでしょ？絶対だめよ」と母。
「この樽メシアン、ビールじゃないよ」と父。慣れた手つきで樽メシアンの乳を搾る。「この子、バターエールだ」
搾りたてのバターエールはモコモコの泡までおいしくて、僕も母も一口で虜になった。新しい家族が増えた。
散歩に連れていくと樽メシアンの中からちゃぷちゃぷと音が聞こえる。「プシュップシュッ！」と元気に鳴く。今日もいい音だ。
公園に着くと少女が駆け寄ってきた。
「今日も飲んでいい？」
頷き、少女の為に樽メシアンの乳を搾る。
渡したバターエールを幸せそうに飲む少女を見て、今日も胸が高まる。
樽メシアンに背中を押され勇気を振り絞った愛の告白。
少女はバターエールと一緒にこくんと飲み込んでくれた。
僕の心は炭酸の泡みたく喜びでシュワシュワとはじけた。