ハーヴェストムーン

ハーヴェストムーン。収穫の月。１０月の満月はそう呼ばれている。
そんな１０月の満月である今夜、我が家では１年に一度の収穫祭の真っ最中。
収穫するものはこの１年、自身が積み上げてきた徳。
その徳を使ってどんな幸運を引き寄せそう？家族皆がそれぞれ自身が積み上げた徳を収穫してはその使い道を考える。
そんな中、兄だけは今年も収穫する気がないようで積み上げた徳は誰よりも高くなっている。
「俺はな、もっともっと徳を高くして、一獲千金の願いを叶えてもらうんだ」
去年も一昨年も、そう話していた。
そんな兄だが、今年はとても穏やかな表情をしている。
いつもなら目先の幸運に囚われた僕達をバカにするのに…
「悟ったのです。この徳を、仏に返す事こそが私の使命だと…」
僕は悪い夢でも見ているのだろうか？いつもと違う兄に鳥肌が立つ。
父も若干引いている。
「あいつ、徳を高くしすぎて坊さんモードに入っちまってる…」と。