ビールの生音 ー起ー

0
1

 七ヶ浜の夕暮れ、波の音に混じって「ゴクゴク」と響く。小さなクラフトビール工房のカウンターで、私はひとりグラスを傾ける。

 黄金色の液体が喉を落ちるたび、潮の香りが鼻に抜ける。浜の灯が水面に揺れ、風が麦の香りを運ぶ。

 もう一口、ゴクゴク。ふと、父が昔教えてくれたことを思い出す。

「ビールは、ゆっくり味わうと時間が止まるんだ」。目の前の一杯に、故郷の記憶と、父の笑顔が重なった。
その他
公開:25/10/06 12:00
クラフトビールコンテスト③ ショートショートガーデン ラベル小説

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容