麻袋、その後

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ピンポーン!ドアを開けると、一人いや一台のロボット。男性マネキンの上半身がショッピングカートのような台座に載って、四本脚に小さなキャスター。マネキンには腕がなく、特徴のない成年男性の顔。筋肉隆々の裸が何だか恥ずかしい。ロボットが喋る。「先日の誤配、申し訳ありません」
ああ、あの麻袋。「で、袋には何が入っていたのかな」
「申し上げられません。注文主様並びに弊社の秘密です」
「方解石とか」
「ああ、言わないでください」
「何に使うのか。マンガン鉱も」
「だめです。おっしゃってはいけません」
「そんなに企業秘密なのか。磁鉄鉱とかも」
「うう、もうだめです」
ロボットは苦しそうに一本の脚を中心に円を描いて何度も回転する。今にも泣きそうだ。「おおお、いじめないでください」
「それに膠」と言うと、ピタリと止まって「膠!」と笑顔が戻った。
膠、膠、と嬉しそうに帰っていった。最近のロボットは理解できん!
その他
公開:25/10/06 09:50

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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