Happy Beer’s Day

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いつも通りに仕事で暮れた誕生日。晩飯を作るのも億劫で、つまみでもないかと戸棚をあさっていると、賞味期限が去年で切れたビールが出てきた。

ああそうだ、別れた元カノの置き土産だ。飲んでもないのに口の中が苦くなる。誕生日の夜に大げんかして、そのまま荷物をまとめて出て行った。思い起こしてしまえば無下にもできず、意を決してタブを切る。
『ハピッ』と調子外れな音がした。
密閉状態のはずだが、管理が悪くて発酵でもしたんだろうか。みょうに甘酸っぱいにおいにじゃっかん怖気づきながら、ひとまずグラスに注ぐ。『バスバスバス……』とけったいな破裂音を立てながら、こんもりと白い泡がしぼり出された。

相変わらず音痴だな、お前は。泡の中から響いてくる聞き覚えのある声に、半分吹き出しつつ一気。
『デデデデ~』と喉を滑っていく泡は、いつか二人で半分こした、苺ショートの味がした。
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公開:25/10/08 21:25
更新:25/10/08 21:29
クラフトビールコンテスト③

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.14執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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