星空の下

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 汚い夜空だな。
 煙草の煙を吐き出しながら男は思った。排気ガスやネオンの光などで、男の目からは空がくすんで見えたのだ。彼の地元では、星は探さなくても目に飛び込んできたし、月は自分のためだけに輝いていた。ふと、男はあることを思い出した。
 昔、リリーという女の子と、家の近くの崖下によく行っていた。そこは二人の秘密基地で、夜に家を抜け出して月を眺めることもあった。潮風による体のべたつきを感じながら、月を見ながらお喋りをする。ある時二人は、その月の下で約束をした。
 ベランダにいた男は、そのことを思い出して笑みを浮かべた。彼女は元気だろうか、と男は思った。家のリビングでは、妻が顔にパックをしながら家事をしている。彼は煙草の火を消し空を見上げた。
 綺麗な夜空だ、と男は思った。
その他
公開:25/10/07 22:47
更新:25/10/07 22:53

よたろー

なまけ癖を克服するために、毎日物語を投稿しています。読んでいただけたら幸いです。

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