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彼氏にフラれ、やけ酒の足でふらりと入った小さなバー。
カウンターには地球儀が置かれ、窓の外には三日月が浮かんでいた。
「おすすめを」
マスターは窓を開け、なんと三日月を掴んで引き寄せた。私は思わず息をのむ。
栓抜きで、尖った先端にカチリと当てる。
プシュッと音がして、黄金の液体がトクトクとグラスへ注がれていく。
注ぎ終えると、外した栓を戻し、カラになった月を夜空へ放る。
「泡はブラジルの雲でよろしいですか?」
私は意味も分からず、首肯した。
マスターが地球儀に針を刺すと、窓外の夜空が明るくなり、燦々と太陽が照らす。その空に浮かぶ雲を、彼は摘んでグラスに載せた。
針を抜けば、外は元の夜。
「どうぞ」と出されたその不思議なビールを、ゴクゴク。
「美味しい」
その味に私の心は癒されていく。
支払いを済ませ店を出る。
夜空を見上げれば、カラの月にうさぎ達がせっせとビールを充填していた。
ファンタジー
公開:25/10/04 16:28
更新:25/10/05 14:13

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