のんでください

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「では、そちらの面接官から。どうぞ」
就活生は、手を向けた。
「うちは残業ゼロです!」
「当たり前です」
「有給取得率100%です!」
「それも当たり前ですって。ちょっと面接官のー……」
「田中です」
「田中さん、一旦深呼吸しましょう」
「スー、ハー。給料三倍、休暇は無制限でどうでしょう!」
「逆に怪しいですよ、そんな好条件」
「え、あ、そんな」
面接官の田中は、必死に書類をめくる。
「こ、これを見てください! 条件を、のんでください!」
そこには「飲み放題」の文字が。グビグビという音が頭に響き、冷えた琥珀色が身体を熱くする。
「おしぼりください」
「ありがとうございます! 採用させていただきます!」
面接官はスタッフを呼び寄せた。
「この方を向こうの部屋に『お通し』して」
スタッフに促されるがまま、就活生は扉へ向かう。
「あれ、ドアが開かない」
「そちらのタッチパネルで操作してください」
ファンタジー
公開:25/10/03 13:03
更新:25/10/03 19:15

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