ふたりの晩酌

スーパーで妻の好きな銘柄のビールを買って帰り、お風呂上がりに共に晩酌をするのが夫婦の長年のルーティンだ。
今夜もキンキンに冷やしたビールを二つのグラスにきめ細かく泡が立つように注いで乾杯をする。
その様子を見ていた娘は決まって
「何年経ってもこんなに愛されてて母さんは本当に幸せよねぇ」
と半ば嫉妬交じりのトーンで呟く。
「まぁ仕方ないか。優しくて綺麗な笑顔だもんね」
「お前も顔だけは母さんソックリに育ってくれたんだけど、性格は俺似だからなぁ」
少しため息を吐くと娘は
「仕方ないじゃん。でも私はふたりのいいところをもらって育ったと思ってるよ」
そう言って私たちの顔を交互に見つめると、「頂きま～す！」と嬉しそうに声を上げ、仏壇に供えた妻の分のビールグラスを手に取って、グビグビと美味しそうに飲み始めた。