ろくろ首の喉ごし

6
5

天狗が缶ビールを飲んでいた。

プシュ、グビグビ、ゴクゴク……プハーッ!
その背後から、ろくろ首がにゅーっと覗き込んだ。
「おどかすなよ!」
「その擬音、たまらないわ。あたしにもできるかしら」
「その首じゃ無理かもな、喉ごしが長すぎるって」
確かに首が数メートルはある。
「どうすればいいかしら」
「そうだなぁ、煙突みたいに真っ直ぐ伸ばして飲めば、擬音が出るかもしれん」
ろくろ首は、にゅるるっと首を伸ばしてみた。天狗は舞い上がって、ビールを飲ませてやった。
グビグビっ、ゴクゴクゴクゴクゴクゴク……プハーッ!
「いい飲みっぷりじゃねぇか」
「あら? 人がたくさん来るわ」
その擬音を聞いて、酒好きな村人たちが集まってきたのだ。
天狗は、素早く缶ビールを仕入れてきて、露店をはじめた。
「そこの旦那、一杯いかがです」
「おお、丁度飲みたかったんだ」

天狗の懐に、お金がザクザク注がれていった。
公開:25/10/05 00:55
#ビール #妖怪

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容