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「ビール飲みたいな」
丸二日眠り続けていた父が、突然パチッと目を開けてニコニコ笑いながら言った。
「はい」
母が慌ててキッチンから缶ビールとビアグラスを持って来た。
グラスに注がれたビールをおいしそうに飲む父。
ゴクゴクッと喉を鳴らしてビールを飲み、最後に「ゴクッ」といい音がした。
わずかにグラスの底に残ったビールがグラスから飛び出て、窓ガラスをすり抜けて空へと昇って行くのを、私たちはぼんやり見ていた。夏の陽の光を浴びてキラキラと輝きながら。そして、病気でやせたとは言え、70キロはある父の体が、キラキラに先導されるかのように軽々と昇っていく。その身体はやわらかなビールの泡に包まれて、琥珀色に輝きながらゆっくりと遠ざかり、小さくなっていく。ゴクッという音が最後に聞こえ、父は青空に消えた。好きなだけビールが飲める世界へ行ったのだ。
丸二日眠り続けていた父が、突然パチッと目を開けてニコニコ笑いながら言った。
「はい」
母が慌ててキッチンから缶ビールとビアグラスを持って来た。
グラスに注がれたビールをおいしそうに飲む父。
ゴクゴクッと喉を鳴らしてビールを飲み、最後に「ゴクッ」といい音がした。
わずかにグラスの底に残ったビールがグラスから飛び出て、窓ガラスをすり抜けて空へと昇って行くのを、私たちはぼんやり見ていた。夏の陽の光を浴びてキラキラと輝きながら。そして、病気でやせたとは言え、70キロはある父の体が、キラキラに先導されるかのように軽々と昇っていく。その身体はやわらかなビールの泡に包まれて、琥珀色に輝きながらゆっくりと遠ざかり、小さくなっていく。ゴクッという音が最後に聞こえ、父は青空に消えた。好きなだけビールが飲める世界へ行ったのだ。
ファンタジー
公開:25/10/04 23:28
2023年10月から参加しています。作品を読んでいただき、ありがとうございます。
noteへの投稿も始めました。よろしかったら、そちらもご覧ください。エッセイ、短歌なども載せています。https://note.com/real_condor254
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