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旅路の小道で、古びた標識に「終始符」と書かれた札が揺れていた。
若い女性が触れると、昨日歩いた丘も、明日辿る海も、一度に広がり、時間の境界が溶けていく。人々は気づかず、鳥の声も風も、日常を奏でる。しかし彼女の胸では、終わりと始まりが絡み合い、川も森も街も途切れず連なっていた。
手元を見ると、もう一枚の札。「終止符」と書かれている。触れると世界の音が一瞬止まり、景色はぴたりと静止した。終止符は、終わりではなく、終始符の旋律を際立たせる一息のようだった。
彼女は微笑み、日常の小さな喜びに気づく。手にした冷えたビール缶をそっと開くと、泡が弾け、プシュッ、トクトク、ゴクゴク、プハァ――世界のリズムに合わせて音が流れた。
旅は続き、景色は移ろう。だが彼女の胸には、終始符と終止符が交わる旅路が、現れては消える極上の泡のように、静かに響き続けていた。日常も幻想も、すべてがひとつの旋律になったかのように。
若い女性が触れると、昨日歩いた丘も、明日辿る海も、一度に広がり、時間の境界が溶けていく。人々は気づかず、鳥の声も風も、日常を奏でる。しかし彼女の胸では、終わりと始まりが絡み合い、川も森も街も途切れず連なっていた。
手元を見ると、もう一枚の札。「終止符」と書かれている。触れると世界の音が一瞬止まり、景色はぴたりと静止した。終止符は、終わりではなく、終始符の旋律を際立たせる一息のようだった。
彼女は微笑み、日常の小さな喜びに気づく。手にした冷えたビール缶をそっと開くと、泡が弾け、プシュッ、トクトク、ゴクゴク、プハァ――世界のリズムに合わせて音が流れた。
旅は続き、景色は移ろう。だが彼女の胸には、終始符と終止符が交わる旅路が、現れては消える極上の泡のように、静かに響き続けていた。日常も幻想も、すべてがひとつの旋律になったかのように。
その他
公開:25/09/30 19:19
更新:25/10/01 19:10
更新:25/10/01 19:10
1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。
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SHUZO