一気飲み

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「飲むのはやっ」
「一杯目はこんなもんやろ~」
キンキンに冷えたジョッキは瞬く間に金色を忘れていた。
「すみません、生中もう一杯」
がちゃがちゃとせわしない居酒屋ではごくごくと気持ちよく飲み干すおじさまの姿が綺麗に溶け込んでいた。
「お待たせしました生中でーす」
「ありがとね~」
ガコンと飛んできたおかわりにおじさまはすぐに手を伸ばす。
ゆらりゆらりと揺らめく白をキラキラの黄金色が支える。注ぎたてのビールはとてもおいしそうに見えた。
「私ももっと早く飲んだ方がいいのかなぁ。」
私は半分飲めたかどうかというところだった。しゃわわと湧く細かな泡が「早く飲んで」とせかしてくるように見えた。
「自分のペースでええんよ」
おじさまは穏やかに言う。
「つまみとちびちび飲むんも一気にぐぐっと飲むんも、ええんよ。おいしく飲むんが一番や」
にぃっと笑うおじさまのジョッキはまた残り僅かになっていた。
その他
公開:25/09/30 18:30

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